クラミジア(性病疾患第1位)
泌尿器科の診察を迷っている女性の方へ
最近、クラミジア感染症が検査で見つかって治療される女性の方が急増しています。
クラミジア感染症は、症状を自覚しない事もあり、又、トイレが近い、おしっこをした後の痛みや不快感、残尿感がある等の膀胱炎症状で来られる方も多いのですが、クラミジアを普通の膀胱炎と誤診、見落として放置すると、将来、不妊や流産等の深刻な問題の原因となる事があります。
インターネットで取り寄せたキット検査で検体を送って調べられる方も増えていますが、検体の採取が自分では正しく出来なくてクラミジアにかかっていても結果が陰性に出て誤判定されてしまう事があり、この誤った結果を信用してしまい後で後悔する事にもなりかねません。
よって、自分で検体を採取して行うクラミジアのキット検査は推奨できません。クラミジアをキット検査で調べて陰性だったが「不安なので…」と受診されて正しく検査すると陽性と判明する方が時々おられます。専門医の早期診断、早期治療が大切です。
原因と感染経路
「クラミジア・トラコーマティス」という微生物が様々な病気を引き起こします。セックスやオーラルセックスによって感染しますが、10代、20代の感染者が圧倒的で全体の70%を占めています。性感染症の中で最近もっとも流行しており、更に無症候性感染(症状の無い感染者)の頻度も高く、全国で約100万人以上の感染者がいると推定されています。
中でも特に若い女性に急増しており、そのほとんどが無自覚のうちに感染して治療の機会を逃したまま進行することが多く、統計的には女性の80%、男性の50%が無症状と言われ、気が付かないうちにパートナーに移してしまっている事が多く、性生活を持つ人にとって他人事ではありません。女性の性器クラミジア感染症は不妊症や流早産、低出生体重児、母子感染による新生児の結膜炎、肺炎の原因となるなど周産期の母子の健康に多大な影響を与える疾患です。現在、女性の出産年齢のピークが30~34歳であり、25~39歳が80%以上を占める中、生殖年齢でもあリ出産年齢に向かう10代20代の性器クラミジア感染症が母子の健康を阻害し、更には少子化を促進する要因となる事が十分に危惧されるとさえ言われている状況です。
クラミジアによって起こる病気/男性
男性クラミジア性尿道炎
感染後、1~3週間の潜伏期間の後、発症します。
尿道から白っぽいウミが出て、わずかに違和感(かゆみや、オシッコをするときの痛みなど)を伴ないます。自覚症状があまりひどくないのが特徴です。
前立腺炎
尿道とつながっている前立腺に炎症が及ぶと会陰部不快感(睾丸の付け根から肛門の前辺りの違和感)、残尿感、下腹部不快感などの症状を感じることがあります。前立腺に圧痛、硬結箇所ができます。
副睾丸炎
男性クラミジア性尿道炎の5%程度に副睾丸炎を併発します。副睾丸(睾丸の上に付着している臓器)やその周辺がはれて圧痛が出てきます
クラミジアによって起こる病気/女性
流産・早産・不妊・胎児への影響
感染後、1~3週間の潜伏期間ののち発症します。
膀胱炎症状や下腹部痛、性交痛などを感じることもありますが、無臭で白い粘液状のおりものが増えるといった程度で、自覚症状がほとんど無いことが多く、放っておくと不妊症や子宮外妊娠、流産の原因となることがあります。
また母親が感染していると新生児の約20~30%が産道内で感染し、結膜炎や新生児肺炎を起こすといわれています。
何よりも早期発見、早期治療が大切です。
検査法
男性は尿検査を行います。
女性は普通、子宮頚部の細胞採取(子宮頸管スメア)で検査を行います。ただし、女性で急性膀胱炎の症状だけの場合は、尿検体の検査で判定が可能です。これらの検査法は近年開発されたDNA増幅法と言われるもので、精度が非常に高くなります。
治療法
薬の服用で、2~4週間でクラミジアが消滅します。言うまでもありませんが、治療中のセックスは厳禁です。
なお、完全に菌が消滅していない可能性も考慮して、治ってから2週間後には再検査を行うことが必要です。
パートナーの治療
片方が治療で完治しても、相手が感染していると「ピンポン感染」と言って再発を繰り返すことになります。パートナーが感染していると約50~60%がクラミジア感染症を起こすといわれています。性感染症内科でのペア検診・治療をお勧めします。
STD(性病・性感染症)郵送検査キットの危険性
郵送検査キットの信頼性や危険性について
- 診断には病態に応じた総合的な判断が必要です。検査キットによる判定結果が「陰性だった」「陽性だった」がイコール診断とはなりません。専門医による診断が重要です。
- 判定結果には偽陽性や偽陰性もあり、本人による判断は病態の見落としにつながる可能性があります。専門医による判断が重要です。
- 淋菌やクラミジアの検体採取が、正しい採取手順でされたかわかりません。間違った検体採取による病態の見落としにつながる可能性があります。専門医による検体採取が重要です。
郵送検査キットの採血量について
郵送検査キットの採血量はごく少量、数滴程度で検査が可能とのことですが、医療機関での採血量は検査の正確性、病態に見落としが無いように初検分、再検分、再々検分に必要な採血量となっています。