前立腺がん
かつて前立腺がんは、日本では必ずしも注目度の高いがんではありませんでしたが、最近急激な増加傾向がみられます。 この25年間に対人口比で10倍以上に急増したといわれていますが、特に中高年の男性にとっては恐ろしい病気のひとつになっています。
50歳を越えるころから急に増え始めるのですが、近年の急増の原因として第一にあげられるのは高齢化社会の到来です。 さらにはPSA血液検査(前立腺がんの腫瘍マーカー検査)の様に、検査法が発達して早期発見ができるようになったこと、それに食生活が 欧米化して高脂肪食の食事スタイルが多くなったことなどが原因として考えられます。 どうして高齢化に伴って前立腺がんが増えてくるのか、そのすじがきは次の様に考えられています。
まず50歳を過ぎた男性の前立腺には前立腺がんの「芽」が出来てきます。 いわゆる潜在性がんですが、このがんの芽は、大部分は芽のままで終わってしまいます。 ところが加齢とともに前立腺の機能が低下し、これに何らかの要因が加わると芽が増殖し、がん病巣が増大すると考えられています。 前立腺がんが統計データ上増えてきた原因として、PSA(前立腺特異抗原)検査の開発をあげましたが、この検査法の開発で 早期発見が容易になった事実があります。 PSA検査が実用化される以前は発見されるのは、ほとんどが進行したがんでした。 それがPSAの登場で早期発見が可能になったのです。
検査自体は約2cc血液を採取するだけでできますから、50歳を過ぎた男性は、1年に1回はPSA検査を受ける様にするとよいでしょう。
前立腺がんの症状
前立腺がんの初期は、ほとんど症状が無いので、大多数の人は気付くことがありません。 前立腺がんは、前立腺の外側(外腺)に出来てくるので、始めのうちは尿がつまることもなく、 これといった自覚症状がないからです。 がんが進行するとさまざまな症状が出てきますが、これは前立腺肥大症とよく似ているので、PSA検査などが診断の決め手となります。 前立腺がんの進行にともなって現るれる症状には次の様なものがあります。
- 腫瘍が大きくなると尿道が圧迫されて尿の出が悪くなる。
- 排尿感はあっても尿が出るまでに時間がかかる。
- 尿が出始めてから終わるまでに時間がかかる。
- 排尿を終える際に尿の切れが悪くなり、しずくがたれる様になる。
- 夜間の頻尿がみられる。残尿感があり、何回も排尿することになる。
- お腹がはる感じ(膨満感)になる。
- さらに悪化すると膀胱の中にたまっている尿を出すことができない尿閉の状態になる。
以上の症状はほぼ順を追って現れます。 そして前立腺がんは、骨盤、腰椎等の骨に転移しやすいのが特徴で、 末期には全身の骨に転移します。したがって末期に近くなると、 頭や胸や腰等、色々な所の骨が痛む様になります。 また、もろくなって骨折を起こしやすくなります。
前立腺がんのよくある質問
症状はよく似ているけれども、前立腺肥大症とがんはまったく別の病気です。
前立腺肥大症は、50歳以上の男性の約20%の人がかかるといっていいほど、がんよりも断然発生率が高いものです。
排尿の状態は前立腺の健康バロメーターともいわれています。状態の変化をただの老化現象とかたづけてはいけません。夜間頻尿は転倒や不眠の原因となって、QOL(生活の質)に大きな影響を与えます。また放っておくと腎機能障害につながることもあり、手術治療が必要になることもあります。
前立腺がんの早期発見を可能にしたのが、1979年にアメリカで抽出されたPSA(前立腺特異抗原)です。
これは前立腺の異常を血液で敏感にキャッチし、早期がんを検出できる他の各種がんマーカーとは比較にならないほど優れたがんマーカーで、通常の血液検査の中で簡単に調べられます。
検査の結果、正常値であれば「前立腺がんの疑いはない」とほぼ確実にいえるほど極めて信頼性の高い画期的な方法です。欧米で初期前立腺がんの発見が急激に増えたのは、この検査が一般の人々に浸透したことが理由のひとつとなっています。
PSAの反応数値が高いほど、異常の程度が大きいことを意味しますが、前立腺肥大症や前立腺炎でも異常数値が出ることもありますので、数値が高いからといってすべてがんとはいえません。
異常数値が出たらまず検査を受けた病院の医師と相談し、設備の整った泌尿器科専門医へ行き、くわしい検査を受けることが大切です。
前立腺の触診、そしてさらにくわしい超音波検査を行います。
泌尿器科専門医では、PSAの異常数値の根源が前立腺肥大症や前立腺炎であるのか、がんであるのか、がんであればどの場所にどのくらいの大きさで存在するのかを確実に調べます。
そして更に必要なら細胞を調べる精密検査を行いますが、この場合は1日入院が必要になります。
この精密検査には様々な方法がありますが、当クリニックでは提携医療機関にて県内でも数少ない医療機関しか行っていない、とても信頼性の高い検査をすぐ受けて頂くことができますので、ご安心下さい。
常に自分の前立腺の状態を把握して、少しでも変化が見うけられたら専門医を受診することがベストでしょう。
やはり50歳を過ぎたら年に一度はPSAの検査をしてください。